読み物/育てて楽しむバラ栽培

【バラ苗コラム】挿し木苗と接ぎ木苗の違いと薔薇の病気『根頭癌種病』


薔薇の苗は、大きくわけて2つの種類・分類があることをご存知ですか?


接ぎ木(つぎき)苗と挿し木(さしき)苗というのがあります。


今回のコラムはこれら2分類
の特徴とメリット・デメリットについて触れるとともに、『根頭癌種病(こんとうがんしゅびょう)』について取り扱いたいと思います。




接ぎ木(つぎき)


まず、接ぎ木苗について。


最も一般的で広く販売されている苗が『接ぎ木』による手法。


販売されている苗の圧倒的多数がこの接ぎ木手法によって生産されている苗になります。


この接ぎ木手法というのは、増やしたい種類の薔薇から枝を切り取って、そして根っこの部分を他の種類の薔薇(日本の場合には国内で古来から自生する「ノイバラ」)からもってきて、双方を物理的にくっ付けて生産する手法です。


つまり、根っこはノイバラ、そしてくっつけた部分よりも上の部分が目当ての増やしたい種類の薔薇になるわけです。


簡単に言えば、薔薇同士を合体させるということですね。


流通している国内生産の薔薇の多数がこのようにして栽培された接ぎ木苗です。


なぜこのような合体手法の接ぎ木による苗が最も一般的に販売されているかと言うと、成長が早いからというのが主な理由


挿し木(さしき)苗と比べると顕著に違います。


薔薇の苗を買われるお客様が最も望まれることは、やはりお花を見たいわけですから、花を愛でることのできる状態にまで早く苗を成長させるようにするのが一番大切な要素と考えられるのは当然だと思われます。


こうして、成長力にフォーカスするからこそ、接ぎ木苗が今日の主流としてのポジションにいるわけです。




挿し木(さしき)


続いて、挿し木苗について。


接ぎ木苗に対して、薔薇の挿し木苗は、日本ではさほど流通していません。

アメリカは日本とは逆に、挿し木苗が主流。)


挿し木苗が普及していない主たる理由は、接ぎ木と比べて成長力が劣る点にあるのは間違いありません。

(この点につき、苗を販売している園芸店の立場から見れば、成長力の弱い挿し木苗を扱うよりも、成長の早い(つまりサイクルが早い)接ぎ木苗の方が販売をしていくのに都合が良いという事情がありますが、これ以上ここでは触れません。)



さて、上記で繰り返してきた「成長力の弱さ」という表現についてですが、実はややアバウトな表現で誤解を招きかねないため、以下で補足をしていきます。


正確には、挿し木苗は「初期成育の段階が遅い」というのが正確な表現です。


じつは成長した挿し木苗はもはや接ぎ木苗と変わらず、よく成長していくようになります


初期成育が遅いものの、よく管理されて約3年を越える株についてはもはや接ぎ木の株と大差なく成長を続けるようになり、品種によってはむしろ接ぎ木の株を凌駕するほどの花を咲かせるようにもなる、というのが挿し木苗の特徴になります。


そのため、

・今後比較的長く薔薇を栽培して楽しんでいきたいと考えている場合には、初期の生育段階にさえ注意して育成すれば、その後の成長には接ぎ木も挿し木も優劣に大差がない。

・ただし、初期の成育が遅いということは、株が成長する前の幼い苗段階で放置気味の栽培をしてしまった場合には枯れ込みやすいので注意が必要、

ということになります。


つまり、挿し木苗は接ぎ木苗よりも株が充実する前の初期段階で手がかかるというわけですね。

(どのように手がかかるのかといった疑問については、後日また別のバラ苗コラムで、様々な病気や害虫についてお話ししたいと思います。)



以上を簡単に示すとこのようになります。



・ 挿し木苗=中級者以上向け


・ 接ぎ木苗=入門者向け



説明しておきますと、

挿し木苗は、初期成育の点で劣るわけですから栽培がやや難しくなります。つまり栽培の中級者以上の方向けの苗ということになります。


反対に、接ぎ木苗は、初期成育の点で優れた苗ですから、多少の失敗や病害虫への対策が後手にまわっても大丈夫なケースが増えます。つまり入門者に向いている苗だといえます。

(なお、これらの分類はあくまでも大まかな目安としてお考え下さいね。)



さて、このように成長力という点で見てくると良いところの少なそうな挿し木苗ですが、じつは「根頭癌種病」という病気との関係では軍配が上がります。


薔薇も罹患する根頭癌種病という植物の病気があるのですが、この大変さ厄介とさと言うや、後述する煩わしさを回避できることこそが挿し木の最大のメリットだと言えると思います。



見ていきましょう。




◆接ぎ木苗と根頭癌種病の関係


「根頭癌種病(こんとうがんしゅびょう)』という植物の病気があります。


簡単に言ってしまえば、薔薇などの樹木に生ずる癌(がん)です。

(細菌性で、株が感染することによって発病します。)



根頭癌種病というのは、株の根元付近の地上部分に突如としてこぶがあらわれる症状で、このこぶを発見することで発病を確認します。

(生育期の場合。)


 (株の地上部分にこぶが現れているのがわかる。)



このこぶは植物から養分を奪って徐々に肥大化していきます。


半面、養分を奪われた植物の成長が著しく阻害されるという症状。



このような癌種病ですが、発病株の治癒という点においてじつは科学的な治療法が確立されていません。


園芸家各自・各社がそれぞれ独自の手法でこの癌種病に向き合っているのが現状です。


ある人によれば「株ごと引っこ抜いて焼却処分するべし」


ある人によれば「こぶを切り落とすだけであとは様子を見ればいい」


などが両極で、その他取り組み方も各人様々です。




さて、完全な治療方法が確立されておらず厄介な病気ですが、じつは国産の接ぎ木苗がこの癌種病に弱いのをご存知でしょうか。


原因は、接ぎ木苗は台木としてノイバラと合体させていると先に書きましたが、このノイバラが癌種病に弱いためです。

(なお、ノイバラは、日本で自生する植物のため、日本の風土・気候にあっていることに加えて成長に優れているため、総合的な見地から台木として選ばれています。)


トータル的にみればノイバラは優秀ですので、癌種病への対策をした上で販売されているわけです。

(バクテローズ」という液体につけることで予め細菌への耐性をつけています。)


しかし、対策をしてもなお根絶しきれずに発症してしまうので厄介なのです。


接ぎ木苗のデメリットを挙げるならば、癌種病の発症リスクを抱えているという点でしょう。


反対に、挿し木苗は自根ですのでノイバラの根とは無関係です。



癌種病との関係でみれば、相対的に安全性が高いと言えるでしょう。

(挿し木苗が絶対に安全とは言えません。あくまでも比較の上で、です。)




◆根頭癌種病の大変さ厄介さ



癌種病を見つけてしまったときの注意点について書いておきます。


これを見つけてしまった場合にはやはりとてつもなくガッカリします。


お伝えしたように、そもそも根本的な治療法が存在しない上に、いかなる条件で発病スイッチが入ってしまうのかについてもよくわかっていません。(細菌ゆえ。)


さらには、じつは他の薔薇苗への感染の可能性も指摘されています。


そのため私どものように数千の鉢・苗を栽培している立場からすると、症状苗を見つけてしまった場合には、病原菌の蔓延を防ぐためにもやはり破棄・焼却処分をせざるを得ません。


前兆もなく気が付くと突然に「ポっ」とこぶが発症してどんどん大きくなっていくので、数か月~1年以上育ててきた株でそれを見つけるのは本当につらいものです。


さらに言えば、じつは破棄するだけで済む話でもありません。


上で見た写真のような地植えの場合ですと、後始末が大変なのです。


癌種病が発症した接ぎ木の株を地植えしていた場合には、発症株を掘り起こして破棄しただけでは終わりません。


植えていた場所、の問題が生じます。


恐ろしいことに、その場所に後日新しく薔薇を植えた時には高確率で癌種病が発症してしまうということが経験則上わかっています。


個体違いの再発…、と言いましょうか、やはり細菌の除去が必要なのです。


そこで、このような再発を防ぐためにも周辺の土の総入れ替えが必要になってきます。


土の入れ替えをしないまま再度植えるのはリスキーだと思われます。


また、どれほどの範囲・量の土を入れ替えればよいのか、という点についての判断も各自に委ねられます。


相当な重労働となるのは間違いありませんが、入れ替えをおススメします。


挿し木苗であれば、このような事態に至る可能性が少なくなるかと思われます。




◆まとめ


接ぎ木苗の根頭癌種病リスクについて触れましたが、言うまでもなく、接ぎ木苗の大部分が癌種病になるわけではなく、発症するのはあくまでも一部に過ぎません。

(私の実感では、接ぎ木苗の中で発症をみるのはおおむね1/50個程度ですが、あくまでも現時点(2015年)における一個人の感想であることを付け加えておきます。なお、当店では、現在のところ接ぎ木苗の生産はしておりません。1/50の件は仕入れ苗についての話になります。)


お客様にとって何より重要なことは、このような治癒困難の病気が存在するという知識とリスクを事前に充分に認識された上で、接ぎ木苗または挿し木苗を選択してお買い求めになられるのがよろしかろうと存じます。

(当店では、広く選択肢を提供する目的で挿し木苗の販売を行っていこうと考えております。)


当コラムはこのような観点で書きました。



当コラムの最後に。


怖いことも書いてきましたが、バラ栽培を恐れないでいただきたく思います。


なによりも、薔薇の花って本当に美しいですよ。


挿し木苗にしろ接ぎ木苗にしても、薔薇の栽培にはそれなりに大変さがあるというのは正直なところではあります。

「放置気味でも問題なく成長する。」となるのは株が充実した以降の話で、株の充実前であれば少しの放置が即座に枯死に直結するケースも少なからずあります。

(例えば高温期の灌水の不足時についての話。)


そうであっても、そのような大変さというのが花が開いたときには簡単に吹き飛んでしまい、忘れてしまうのです。


不思議なほどに。


古くから人を惹きつけてやまない薔薇の魅力、いや、もはや魔力というべきでしょうか。


自ら育てて花を開かせた喜びは、例えるなら、自らの脚で悪路を超えて険しい山を制覇したときのような達成感に似てるかもしれませんね。


とても嬉しく、感動するもので、ふと気づいた時にはすでに薔薇に夢中になっていたりします。


世の中には、簡単で単純ではないからこそやりがいがあって楽しいものってありますよね。


バラを育てる楽しみって、そういうものだと思います。


まずは一苗から。



コラムをご覧くださっているあなたも、私たちと一緒に『バラを育てて楽しむ生活』をはじめてみませんか?



2015/11/26 . Sentence/All Photos:店長花田

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